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2012年度 第3回 コンサルティング業界(通算17回)

佐藤爲昭(さとうためあき)様

コンサルティング業界におけるコンサルタントの業務及び営業についてお話をしますが、この業界では、営業と業務が渾然一体となって行われるケースが多く、コンサルタントの業務全般の説明の中で現実の営業も含めてお話します。

講義の全体のコンテンツはつぎのとおりです。
1 プロファイル(経歴)
2 職業としてのコンサルティング
3 コンサルティング業界
4 コンサルティング会社
5 コンサルティングニーズとバリュー
6 コンサルタント・フォーカス
7 コンサルティング事例

今日のお話の前提となる私のプロファイルを説明した後、コンサルティング及びコンサルタントの概要説明をします。
まず、職業としてのコンサルティングとはどのようなものか、コンサルティング業界の全体像をザックリとご説明します。
つぎにコンサルティング会社の組織構成や実際のサービス提供の際のチーム構成についてご説明します。

コンサルティング業務は物品販売と異なり、無形の役務サービス提供です。顧客(クライアント)のニーズがあってはじめて提供できるものです。コンサルティングサービスがどのような価値(バリュー)を提供してニーズに応えているか、またコンサルタントとしてどのような資質や技能が求められるかをご説明します。
以上の業界及び職業の概要を説明の後、実際の現場の経験談をお話します。

プロファイル(経歴)

当初、会計監査を行なう監査法人(会計監査を行う会計事務所)に入り、会計監査業務やIPO(新規株式公開)支援業務等の財務系のコンサルティング業務を担当しました。
その後、IPOや事業再生、M&A等の財務系のコンサルティング業務中心に業務の主軸を移し、非財務系のコンサルティング業務、具体的にはISO(国際標準化機構)の品質(ISO9001)及び環境(ISO14001)を中心としたマネジメントシステム構築支援業務を立ち上げ、最終的に監査法人100%出資のコンサルティング会社を設立し、責任者としてやってきました。

5年前に監査法人の管理部門に移り、経営企画部として組織変更や子会社管理を行いましたが、実質的には社内向けコンサルタントです。
昨年、事業会社に転職し、日常業務を持たない特命担当として新規事業のプロジェクトや経営企画・経理業務の課題対応を行なってします。

職業としてのコンサルティング

コンサルティング自体、明確な定義はありませんが、一般的に持たれているコンサルティング業界のイメージから定義しました。
(定義)コンサルティングとは、組織経営における課題・戦略について、診断・提案・助言・指導・報告することをとおして組織の課題解決を支援すること

コンサルティング業務の分類では、まだ確立されたものはありませんので、説明のためつぎの5つに分けました。
まず、「戦略系」とは、企業の経営陣に事業戦略についての提案を中心に世界や業界のトレンドを前提としてプレゼンするグローバルなファームです。
また「シンクタンク系」とは、一般的に研究調査をベースに広く景気状況や市場状況等の情報を分析して報告します。
「経営系」は、戦略を具体的に展開する場合の経営・組織を対象とした支援サービスを行ないます。
「人事・組織系」は人事制度の構築や業務レベルでの支援、具体的には給与計算システムの導入支援等サービスを行ないます。
「IT系」は、当初はコンサルティングというよりシステムベンダー(システム提供会社)がITシステム導入のためにコンテンツにサービス内容を広げて行ったことにより経営戦略の集約・組織管理・業務オペレーションの各段階でITツールをベースにサービスを提供します。

コンサルティング業界

以上をイメージ図として表したのが右のコンサルティング業界の図です。3つの層(戦略と経営・組織と業務・オペレーション)のエリアに各区分のコンサルティングが分布しています。
またコンサルティングと区別しにくい類似のものとして、「アドバイザリーサービス」や「インソーサー」や「アウトソーサー」などがあります。

コンサルティング会社

コンサルティングファームの組織階層(ハイアラキー)は、あまり階層のないフラット型の組織です。具体的には、経営層としてのパートナー、管理職員としてのマネジャー、職員としてのコンサルタントとアナリストによって構成されています。
また実際のサービス提供の際のプロジェクトチームとして、そのまま契約責任者をパートナーが担当し、チーム管理をマネジャー、個別の担当責任者をコンサルタント、コンサルタントを作業単位でサポートしていくのがアナリストという構成です。

コンサルティングニーズとバリュー

コンサルティングサービスはクライアントのニーズがあってはじめて提供できます。右図は、ひとつの課題や戦略に対して認識・対応し、見直しが行われるプロセスをひとつの時間軸の流れとサービス価値(バリュー)の関係として説明した図です。
時間(横軸)とバリュー(縦軸)との相関を放物線で表し、そのステージごとにA、B、Cに区分しました。
Aのエリアは、初期の段階でクライアントは問題意識がないか、あっても問題やリスクの把握が出来ていない状況です。
Bのエリアでは、クライアントは何が問題かを明確にわかっており、解決方法もわかっていますから、コンサルタントはクライアントの要求に沿った見積書を提出し、価格競争を勝ち抜かなければなりません。
Cのエリアは、課題に対する対応を実施した時点で問題は起こっていますが、複雑に絡み合っているためその原因や解決策がわからない状況です。
Aの状況では、コンサルタントが課題やリスクを明確にしてソリューション(解決策)を提案することによって高いバリューを提供できます。
Bでは、作業量に応じての報酬となるため、大きなプロジェクトでは総額は大きいですが、利幅(バリュー)は薄いものになります。
Cでは、対策後の複雑に絡み合った現状の業務改善が中心となり、潜在的ではありますが新たな課題が発生しているという状況です。次の課題の放物線のスタートと重なる場合もあり、高い価値(バリュー)の提供が可能です。
サービス提供パターンの例としては、次の2つが挙げられます。
「指導型」とは、クライアントがプロジェクト成果をあげられるようコンサルタントはプロジェクト・ミーティング、説明会やセミナーを通してプロジェクトを管理し、プロジェクトマネジメントを推進します。
「成果品型」とは、クライアントから資料や情報を入手し、レポート(報告書)として提出する場合ややシステム・ソフト等を構築・作成し、納品します。

コンサルタント・フォーカス

コンサルティング業務に従事するコンサルタントして必要な知識・経験・技能については一律にまとめることはできませんが、資質としては次のものは重要だと感じます。

またスキル・技法は、コンサルティングチームで分担してサービス提供するため、すべてが備わっていなければいけないわけではありませんが、次のものがコンサルタントとして主要なツールとなります。

コンサルティング事例

実際の経験では、次の3つをお話します。
シティホテルの業績改善調査の事例は、依頼者とコンサルティング先が異なるケースです。コンサルティング会社は営業部門を独立には持っていない場合が多いと思います。IPO等で連携している銀行・証券会社等の金融機関と営業ネットワークを構築して案件を提供してもらっています。
通常融資先の業績が悪化すると地方銀行はリスクを避けるために融資を引き揚げるのですが、このケースでは地域自治体も出資する第3セクターの共同出資事業であったためにリスク回避が出来ず、これまでのネットワークを通じて業績回復の相談・調査の依頼がありました。
当初の目的は県外からの進出企業の要望対応としての外来者用の宿泊施設を提供することにありましたが、現状は、「船頭多くして船山に上る」の例えのとおり、出来上がったホテルは宿泊施設とはかけ離れた吹き抜けの玄関などがあるシティホテル張りの豪華仕様となっていました。
周囲のホテルの価格帯から設定した宿泊価格は高額設定となったため客室稼働率も低く、集客できないためレストランも朝食以外ほとんど利用のない状況でした。
調査を実施していく過程で周辺の状況や市場規模を分析した結果、
① 周辺にはコンベンション施設がない
② 地元での結婚式は料亭等で行なわれているが、若者に人気がない
③ 団地内では給食が行なわれていたため、外来者用の食事を提供する施設がない
1時間圏内に大都市が在るため、コンベンションや結婚式は都市部に流れており、婦人会などの会合は公民館の予約が取りにくい状況であった。また外来者の場合、空港や乗り継ぎの主要駅で食事を済ませてくることや団地の外にわざわざ昼食を取るために出かけていることもわかりました。
調査報告では、現状分析にとどまらず経営戦略として次のような提案を織り込んでレポートをまとめました。
(現状分析)
① 施設のグレードは高いが、利用者のニーズはビジネスユースであり、昼間の利用はない
② 宴会場など十分な施設があるにもかかわらず、コンベンション誘致の営業担当がおらず、ブライダル雑誌等への広告も全く行なっていない
(提案)
① 宿泊部門においては、県外からの進出企業の利便性向上を第一義に宿泊価格を大幅に引き下げること
② 料飲部門においては、若者が離れていく現状対策として地域社会への貢献の見地から、近郊の都市部に流出していたコンベンションや結婚式などのニーズに対応するとともに婦人会などの昼間時の会議需要の開拓を推進すること
③ 料飲部門においては、ビュッフェスタイル(食べ放題)を止め、ホワイトカラー用のビジネスランチ(コーヒーサービス)に切り替えること
今までにも宴会場や会議室の利用促進のためにカラオケ施設への改造等を行なってきましたが、宿泊者利用を想定していたため夜間利用を想定したものでした。
今回の提案は、利用の少なかった昼間や土日の活用促進であり、豪華施設に合った施策であったこともあり、営業等の改善強化の結果、
① 婦人会での評判から昼食付の学校関係の父兄会やお誕生会等のニーズを掘り起こした
② 地元での結婚式の潜在的なニーズはあったため、土日の宴会場稼動が急激に伸びた
③ 県外からの外来者は団地内での宿泊、昼食利用が高まった
以上のほか、中国や韓国からの団体旅行グループは都市部でのホテルの確保が難しくなっていましたが、コンベンション営業の結果、大型バススペースも十分あったこともあり、旅行会社の方から団体宿泊予約も来るようになり、都市間のツアーの中継宿泊地として客室稼働率も回復しました。

コンサルティングでは、依頼者である地方銀行が過剰仕様・過大規模との認識であったため、規模縮小とは正反対の積極経営の提案にはレポート原稿段階で説得に苦労しました。そのためブライダル雑誌の広告以外、予算はほとんど使えない状況でしたが、それまで社長以外営業担当がいなかったこともあり、リストラを免れたホテルの従業員に頑張っていただき、1年で黒字に転換しました。地域住民や団地の企業からも大変喜ばれ、地方銀行との営業ネットワークをより強固なものにすることができました。
環境マネジメントシステム導入支援の事例は、コンサルティングニーズとしてはBエリアに該当しており、通常、バリューは低いのですが、特殊要因(同一行政レベルで日本一最速の認証取得目標)があったため、企画コンペではありましたが、実績が重視され受注できました。実際のプロジェクトマネジメントでは時間の勝負となり、労働組合とのトラブル等、種々雑多な障害をひとつひとつ取り除き、無事審査機関の認証取得を達成しました。
コンサルティングでは、同一行政レベルで一番目の認証取得目標が重圧となり、職員とのコンセンサスが取れません。数千名の組織は、企業も含めて地域では最も大規模な組織であり、プロジェクトメンバーの職員との会議では、こちらが現状打開の提案をすると自治体側の担当が「その案はリスクが高く、採用できない」という論理を展開し、一日中、堂々巡りの会議をしたこともあります。役所の役人はプロジェクトに選抜されただけあって、理詰めで反対意見を言ってきますが、責任問題になることを極端に嫌います。
時間切れ寸前になって、顧客ではありますが役所の担当者に「出来ない理由を一生懸命考えるより、どうやったら出来るかを考えてください。」と言って席を立って帰り、翌週になって訪問するとこちらの提案に向けて検討がされていました。自治体のプロジェクト責任者の勇気と決断に感謝しました。
環境報告書作成支援の事例は、コンサルティングニーズとしてはCエリアに該当します。民間の鉄道会社であり、電気の大量消費や騒音・振動の環境負荷や、ターミナル駅等での大量の廃棄物が発生するため、環境マネジメントシステムを導入しました。さらに環境及びCSR対応行動をとる際に利害関係者の理解を得るため、環境報告書の必要性を提案し、受注にこぎつけました。
コンサルティングでは、事例もあまりなく、あっても二番煎じではないオリジナルなものを提案する必要があります。また環境については、国際会議や先進的な外国企業・NPO等のグローバルな動向や取り組みを把握しておく必要がありますので、私どものコンサルティングファームのネットワーク、特にEUのメンバーファームとの情報交換は必須でした。
また、環境ビジネスも日進月歩の状況で環境報告書の印刷用のインクも環境に良いダイズ由来のものもダイズが不足すると食糧問題と絡んでベジタブル由来のものなどに替わってゆきます。また紙の使用を少なくするために一部詳細情報はWeb掲載に代えて環境/CSR報告書のページ数を減らさなくてはなりません。国際会議の動向では、CO2の取引市場の国家間の主導権争いの中で動向説明と将来の見込に対する提案を提供しなくてはいけませんでした。
環境・CSR報告書では、環境やCSRとして良いことだけでなく、環境負荷や法令違反行為があれば記載しないと、逆に批判の的となります。この点も発行企業であるクライアント側を説得しなくてはいけませんでした。
また環境報告書を発行した後のステークホルダー(利害関係者)の反応や企業のイメージアップへの貢献度などを調査報告する際は、翌年の受注と直接結びつくことになるため、締め切りのたびに深夜残業が続きます。
一番大変なことは深夜残業が続くことではなく、クライアントが納得する客観的な基準が明確にはないことです。そのため、どの報告書やレポートも納得していただくためにオーバースペック(遣り過ぎ)にならざるを得ないことでした。
実際のコンサルティングでは、導入説明や啓発セミナーとともに環境報告書のコンテンツ(もくじ構成)から記事の収集評価システムの構築、印刷会社の選定と企画から発行の全プロセスのプロジェクトマネジメントを担当し、発行した後も翌年移行の更新のために新しい情報提供や読者反応の収集評価をサポートしました。
コンサルタントとして業務を通じて感じたことは、コンサルタントもクライアントの担当者も解決すべきプロジェクトの課題に向かう意識が重要であるということです。主観的な「のめり込み」や客観的な「プロ意識」の間の「当事者意識」の認識がプロジェクトを推進する力となったと感じています。

以上


>>2012業界研究 第4回 広告