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2017年度 第9回 住宅建設・不動産業界(通算91回)(平成29年12月7日)

住宅・不動産業界の現状と今後の方向性

渡邊 文孝様   
 元住友林業ホーム㈱理事
 元住友林業ホーム㈱関連グループ子会社(3社)取締役

◆ 住宅建設業と不動産業の種類

 住宅建設業を建物の用途で分類すると、
  「注文住宅」・「分譲住宅」・「賃貸住宅」・「住宅以外の建物」
に、不動産業を業態で分類すると、
  「開発」・「流通」・「賃貸」・「管理」
となる。それぞれの業務内容については重なる部分が多いため、住宅は「請負」と「販売(分譲)」に、不動産は「売買(仲介と販売)」・「賃貸」・「管理」・「開発」に分類できるが、それぞれの業務内容に応じた知識や資格が必要であり、プロセスも異なる。

◆ 住宅・不動産業界が直面している現状の課題

1)人口減少と新設住宅着工戸数の減少
  我が国の人口は、2008年の1億2,808万人をピークに減少し続けており、2055年には9,193万人に減少すると予
  測されている。住宅の新設着工戸数についても、年により上下はあるものの1973年の186万戸をピークに減少傾
  向が続き、2016年の96万7千戸はピーク時から半減した。また、新設住宅着工戸数の今後の見通しは、ここ数年
  は漸減ながらも90万戸前後を維持するが、2025年には62万戸(2016年比▲65%)になると推計する研究機関も
  あり、これまでのような新築住宅の市場だけに頼る事業では経営が成り立たない。
2)住宅ストック数の増加(空き家問題)
  総務省が2014年7月に発表した「2013年の住宅・土地統計調査」によると、2013年の国内の住宅総戸数(ストック
  数)は約6,063万戸であり、同年の世帯数5245万世帯を差し引いた約820万戸が空き家であるという報道に、当時
  は住宅業界だけでなく多くの業界から驚嘆の声があがった。当然ながら、住宅の除却数が新設数を上回らなけれ
  ば住宅のストック数は増え続けることになり、現状のペースで今後も推移すると2033年には2167万戸(2013年比
  2.6倍)にもなるという試算もある。このような現状の中、国の住宅に関する政策が新築からストックに力点が置か
  れるようになり、2016年6月に発表された「日本再興戦略2016」では「既存住宅流通・リフォーム市場を中心とした
  住宅市場の活性化」と題し、既存住宅の流通規模を現在の4兆円から8兆円に、リフォーム市場を6兆円から12兆
  円にするという方針が示された。
3)既存(中古)住宅流通量の増加について
  新設住宅着工戸数の減少のほか、下記のような背景や理由により、今後の既存住宅の流通量は増加すると推測
  されている。
   ①大都市への人口集中傾向が強まり、とりわけ東京圏(1都3県)への人口増加が進み、2015年の東京圏の人
     口は3,613万人と全国の28.4%を占めている。
   ②2020年オリンピック・パラリンピックの東京開催やアベノミクスによる好景気の長期継続により、都心の商業地
     を中心とした地価の高騰が進行していることから、23区内の住宅価格、特に新築分譲マンションの価格が高騰
     し、一般の給与所得者が23区内で新築住宅を購入しにくい状態が顕在化している。
   ③若年層を中心とした住宅に対する価値観の多様化や変化により、従来の「新築一辺倒」というニーズからリ
     フォームやリノベーションへの関心が高まってきたことで、既存住宅への意識も変化してきている。
   ④リーマンショックの翌2009年の新設住宅着工戸数は78万8千戸で前年比▲28%と急落したが、同年の既存住
    宅の流通戸数は16万9千戸で、新設着工数と既存住宅流通数とを合わせた全体の割合が16.7%を占めたこと
    から、新築住宅の供給が減少すると既存住宅の流通量が増加することが裏付けられた。
   ⑤2018年4月より、既存住宅の売買(仲介)において売主は、インスペクション(建物診断)の実施有無を買主へ 
    説明することが義務づけられる。また、耐震性が基準を満たしていることや過去の修繕履歴を明示した優良な
    既存住宅(あんしんR住宅)等の創設など、国の政策や税制の優遇措置等で今後ますます既存住宅の流通が
    拡大するものと期待される。

◆ 住宅・不動産業界の今後の方向性

1)事業の多様化・経営の多角化に向けた動き
  大手企業では、新築住宅建設の請負や分譲住宅の販売を主力とする経営だけでは限界となり、幅広い事業を展
  開しなければ、会社として将来の生き残り勝ち残りが難しい時期に直面している。
  経営の多角化の内容は様々であるが、
  ①会社の規模や事業領域の拡大のために行う同業・異業種企業とのM&A(合併・買収)や資本提携など
  ②アパート等の賃貸住宅、住宅以外の商業施設や物流倉庫等、需要が急増している高齢者住宅等の建設及びそ
    の管理や運営など
  ③公共事業において民間の資金やノウハウを活用するPFI(Private Finance Initiative)事業や不動産の証券化
   (リートやプライベートファンド等の金融商品としての不動産)など
  ④さらには、農業・食品・発電・ロボットなど、多種多様な異業種へのチャレンジをする会社が増加している
2)海外への進出が加速
  日本企業の海外への進出は最近始まったことではないが、住宅・不動産業界では直近10年間での大手企業の海
  外進出が顕著になっている。海外への進出にはカントリーリスクやオペレーションリスク等多くの問題を克服する必
  要があるが、先細る国内需要だけでは限界が見えている現状から、中国をはじめ急激に発展している東南アジア
  への進出が加速している。
3)トップ企業の紹介
  ①大和ハウス工業
   経営の多角化や海外進出をいち早く進め、収益が見込まれる多くの業種を様々な手法で事業に採り入れ、2017
   年3月期の売上高は3兆5千億円で、住宅・不動産業界ではトップを走り、さらに拡大成長を継続している。
  ②住友林業
   アメリカ・オーストラリア・中国・東南アジア等への積極的な展開を拡大しており、その多くは現地住宅メーカーへ
   の出資により持分取得(子会社化)している。2016年度における海外での住宅供給戸数は5700戸を超え、2017
   年度の戸数見込みは同社の国内供給戸数に迫る勢いで、住宅メーカーの中でナンバーワンとなっている。

◆ 営業職の仕事の重要なポイント、基本姿勢

 住宅購入者にとって住宅を持つことは夢であり、一生に一度か二度の大きな買い物である。その夢の実現の手伝いをする住宅や不動産に携わる営業職は、ミスや失敗が許されない重要な職務であり、お客様の期待に応えるやりがいのある仕事である。
 重要な職務を遂行するために必要なスキルを身に付けなければならないが、特に重要なのはお客様に信頼されるためのコミュニケーション能力であり、お客様への気遣いや聴く力、歩調を合わせ一緒に問題を解決しようとする姿勢(ペーシング)がキーポイントとなる。最終的には、お客様から「物(商品)と心(人の対応)の満足」を得ることが最大の役割であることを認識しなければならない。

◆ 企業が求める人材

 営業カテゴリーによってプロセスや対象も異なるが、企業が求める営業職としての人材は、「人と向き合う仕事が好きである人」・「自分の目標や夢に向かって意欲と情熱がある人」「お客様の笑顔(満足)を得るために努力を惜しまず自発的な行動がとれる人」などは共通である。
以 上