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2015年度 第7回 化学(化粧品)業界(通算63回)

橋本 健 様  元 花王株式会社取締役常務執行役員

テーマ:花王のケミカル事業の営業職について

花王株式会社は総合トイレタリーメーカーとして、知られている会社ですが、その基盤ともいえる事業にケミカル事業があります。多種多彩な産業と結びついている事業概要とそこでの営業職の仕事について説明致します。

◆概 況

1887年に石鹸や文具の輸入販売をする洋小間物商として創業し、1890年に国産の「花王石鹸」の製造販売を開始しました。当時、国産の石鹸は品質が悪く、衣料の洗濯用にしか使用できないものであったので、顔を洗える品質の良い石鹸を開発研究し発売しました。社名の花王は「顔」の音から由来するものです。現在では売上1兆4,000億
円、営業利益1,300億円の規模に成長し、従業員はグローバルで33,000人が働いています。

◆花王の企業風土

花王石鹸の発売以来、品質の高さにこだわりをもち、「よきモノづくり」を絶えず志向しています。これは愚直なまでの「消費者視点」の徹底と消費者への奉仕の精神が基盤となっています。また、現状に満足することを戒める「絶えざる革新」や「正道を歩む」ことを基本的価値観として掲げております。また、人間の尊厳と平等な立場を大切にする風土づくりのため、社内では肩書きで呼ぶことはなく、「さん」付けを徹底しています。これにより情報の共有化を可能にし、自由闊達な企業風土が醸成されております。

◆絶えざる革新

業績が順調な時ほど、その裏側には衰退の兆しが潜んでいるという「健全な危機意識」を持つことを徹底し、「現状不満足意識」を植え付けた活動として、TCR(Total CostReduction)活動があります。1986年に世の中がバブルのなか、会社業績も大きく成長している時期であったが、社員の危機意識を呼び覚ます為に仕事の仕組みを見直すコスト削減活動がトップダウンでスタートしました。その後、単なるコストダウン活動から質の革新や新しい価値創造の活動へ進化し現在も続いています。この活動により、単なるコストダウンだけでなくトップダウンとボトムアップの融合による双方向のコミュニケーションが推進され、現状不満足意識が徹底されてきました。

◆ケミカル事業概況

花王のケミカル事業は、石鹸を製造する際に副成するグリセリンの発売が起源となっています。グリセリンは、食品添加物の甘味料やタバコの保湿剤など多くの用途に使用されています。ケミカル事業は、石鹸の原料であった「牛脂」や「椰子油」を加工してできる高級アルコール、脂肪酸など油脂誘導体や界面活性剤などを多様な産業に販売している事業であります。事業活動は日本のみならず、アジア、欧米にも展開し、売上比率も三分の一ずつ均等な割合となっており、他事業に比べ最もグローバル化が進んでいる事業となっています。対象産業は、プラスチック・ゴム、塗料・インキ、情報・エレクトロニクス、香粧品・化粧品、食品、農業、金属、鋳造、土木・建築など幅が広いです。そのうち環境負荷低減に関わる具体例としては、ゴム分野でのタイヤ加工剤、紙・パルプ分野での脱墨剤、複写機・プリンター用低温定着トナー、鋳物分野でのパルプモールド湯道管、金属分野での圧延鋼板用低温洗浄剤・リンス剤などがあります。

◆ケミカル事業の業務

ケミカル事業の商流は、需要家との間に代理店(専門商社)を活用することが一般的です。一部、主原料として使用される場合や情報関連分野は直接取引をしている場合があります。営業パーソンの業務は多岐に渡り、需要家の購買・調達部門のみならず、工場、研究開発、事業部など多くの部門との関わりがある。一方、自社内では生産、研究、コーポレートなど多くの部門との連携が必要で、言わば、中小企業の経営者と同様な活動が必要とされます。
私は、文化系出身だったので、化学の基礎知識について再学習の必要があり、得意分野ではなかったが必死に勉強するしかありませんでした。

◆経験事例

①売価管理(収益管理)
   販売している製品の原料は石油由来の化学品や牛脂、椰子油、パーム(核)油などの天然油脂が多く、収益管
   理のために、変動による価格改定を実施することが重要となっています。
②海外会社設立・設備投資
   担当商品の日本国内生産設備がフル稼働で、なおかつ老朽化していたので原料産地に近いマレーシアに新増
   設を起案し、原材料なども自身で探索・調達し、設備完成後は拡販のため海外市場を奔走しました。
③海外原料メーカーへの委託加工
   一製品の既存製造設備が満杯となったため、コストダウンも期待し、国内生産プロセスの一部を中国の原料
   メーカーに委託することにチャレンジしました。全ての中国企業が国営の時代で、外国人には種々の制約があり
   ましたが、良きパートナーに巡り合えたことと失敗に寛容な企業風土のおかげで成功したと思っています。
④M&A
   事業の拡大・強化を短期間に実現する為にM&Aは有効なので、2件の事例を経験しました。いずれも成功には
   至りませんでしたが、様々な知識が必要であり、貴重な経験となりました。

◆メーカー営業の進化

メーカー営業は、最初は商品を適正価格で商品を「販売」するというステージから、次に社内関連部門とのチームワークを発揮できる「営業」に進み、最終的には「事業」を運営し、経営のサポートができるように進化すべきと考えます。
営業の仕事は一言で言うならば、商品の価値に気づいていない人に、気づかせることと思います。