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2014年度 第3回 半導体業界(通算45回)

中塚 晴夫 様

1966年 株式会社東芝 入社
1999年 株式会社東芝 常務取締役
1999年 株式会社東芝セミコンダクター副社長

半導体・電気産業における営業業務

半導体とは

半導体を中心とした電気産業は、物を作るという点では他の製造業と同じですが、他に比べて特色もあります。最も特徴的なことは、技術が非常な勢いで進化していく点です。その結果、テレビ、ゲーム、パソコン、スマホというように次々と新しく複雑な製品が生み出されてきます。そしてそれらは世界中で販売されます。それらの製品のおかげで、例えばインターネットの普及のように、世の中が進歩しています。その一方で、進化していく技術を使って物を作るには莫大なお金が必要になって来ています。それだけお金をかけて作った物は、大量に売って、使ったお金以上の売上げを達成しければ大損をしてしまいます。従って、幅広い製品を世界中に売ることが求められます。しかし競争相手が世界中にいて非常に激しい競争をしているのも半導体・電気産業の特色です。非常な勢いで進化していく技術は、実は世界中で共有されている(誰でも知ることができる)ので、世界中で競争になるわけです。極端な言い方をすれば、膨大なお金を集めてきて、優秀な技術者を集めてくれば、世界の誰でも物が作れるわけです(日本人だけが頭が良い訳ではない)。以上まとめると、半導体・電気産業の特色は、(1)非常にハイテクである(常に技術が進化している)、(2)グローバルである(技術的にも販売的にも、世界中で競争している)、(3)熾烈な(非常に厳しい)競争にさらされている、という点にあります。

半導体の仕事とは

次に、半導体企業の中でどんな仕事があるかを紹介します。先ずどんな新製品を作るのかを考え出す製品企画部門があります。その企画(製品の仕様書)を、実際の製品として製造できるように設計する開発部門があります。続いて、開発部門で設計された製品は製造部門で量産されます。最後に製品を売るのが販売部門です。この役割分担は、他の物作り企業でもほぼ同じです。製品企画部門は最終商品(テレビとかスマホなど)の技術動向を調べて、それに使われる半導体部品の機能を先取りして仕様書を作成します。開発部門は、その仕様書にもとづいて、常に進歩する技術を使って新しい製品を設計していくことになるのが特色です。別の言い方をすれば、常に勉強して新しい技術にチャレンジしていく必要があります。製造部門でも、新しい製品を製造するには常に新しい製造技術を必要とします。従って工場でも高学歴の人たちが働いています。販売部門の仕事は、先ず製品をお客のところに売り込んでいくこと、買ってくれることになったら値段や納入期日などを合意して注文書を貰うこと(これで売買契約が成立する)、約束した納入期日にちゃんと物を納めること、そして最後にお客から期日通りにお金を貰うこと、を行います。

半導体の営業の仕事1

営業の仕事というのは最後の段階の販売だけではありません。日本では営業をひとまとめの役割分担にしていますが、海外(特に欧米)では営業という部門はなく、マーケティングとセールスという分担に分かれています。マーケティングは、技術動向を知り、お客を訪問したり市場調査をしたりして、製品の企画(仕様書)を作ります。この仕事は技術力を必要とし、日本流に言えば営業技術者とか応用技術者が行います。製品企画は、その後その製品が売れるかどうかに大きく関係するので、非常に重要です。日本企業は必ずしも製品企画力に優れているとは言えず、個々のお客の言う通りの製品仕様書を作る傾向がありました。その結果、そのお客にしか売れない製品となり、他のお客にはちょっとだけ異なる別々の製品を作らなければならなくなり、極めて非効率です。これに対して欧米では、(全部がうまく行っているわけではないが)お客の最終商品をよく研究し、お客に言われる前にその最終商品用の半導体製品を企画する。しかもどのお客にも採用されるような仕様書にする。そうすると、お客は次の新商品(最終商品)にこの半導体製品が必要なので、買ってくれる、というようなシナリオが、成功したマーケティング活動です。実例として、アメリカのQualcomm社はスマホ用の通信規格を先取りした半導体を開発し、世界中で圧倒的な市場占拠率を占めています。スマホのメーカーは、非常に複雑な通信規格を自分で勉強しなくても、Qualcommから半導体部品を買えばスマホが出来るので、皆が買うようになるわけです。

半導体の営業の仕事2

販売段階がセールス(日本ではこの仕事を営業と呼んでいる場合が多い)です。ただ半導体はハイテク製品であり、またお客である最終商品メーカーもハイテク産業なので、技術知識無しには売込みは困難です。そこで売込み段階では、技術部門の人と営業部門の人が一緒になって活動します。例えばマイコンをテレビ用に売り込むには、先ず営業の人が新モデルのテレビを開発しようとしているお客を探してきます(営業の人の情報収集力が必要です)。技術者と一緒にお客のテレビに最適のマイコンをPRし、先方の要求と合致すれば急いでサンプルを作り提供します。お客のところでサンプルをテレビの試作品に組み込んで色々なテストをしてOKとなれば、売込み段階は成功です。次からは営業だけの仕事になりますが、実際の売買契約を成立させる必要があります。具体的には値段、納期や支払い条件を交渉し合意できれば注文書を貰えます。注文書を貰って初めて受注できたことになります(この段階が営業の仕事で最も大きな達成感を得られる)。その後製造部門に納期通りに物を作ってもらい、お客に納入します。これで仕事は終わりではなく、支払い条件通りにちゃんとお金を払ってもらうまで責任を持つのが、営業の仕事です。

半導体の営業の仕事3

上記半導体の営業の仕事2のように順調に物事が進めば良いのですが、色々なトラブルに遭遇することも有ります。上記とは別の例ですが、めでたく注文書を貰って工場で製造を始めたところ工程トラブルが起こって約束の日までに製品が納められなくなりました。お客様側では予定していた新商品の発売時期に間に合わないと大騒ぎになりました。担当の営業の人が、双方の事情を調べた結果、お客の製造ラインでは1日数百台作る(注文書では一度に数万個の半導体を納入することになっていた)ということが分かった。そこで工場に頼み込み、(半導体工場では通常、一度に数万個分の一括生産を行うのだが)少量で良いから超特急で作ってもらい、千個を約束の日に自ら車を運転して届けました。お客からは、製造ラインが繋がり新商品の発表に間に合ったと、非常に喜ばれ、次の商売にもその営業マンが指名されるようになりました。これは古典的な営業スタイルの事例ですが、今も昔も人と人との信頼関係が基本にあることは変わりません。

最後に

別の視点ですが、値段交渉は営業の非常に重要な仕事です。日本企業はとかく値下げをして注文を取ろうとする傾向があります。商売は売る方も買う方もメリットがあって成り立つ、いわゆるWin-Winの関係が成り立つ必要があります。売る製品がお客にとって価値が高いことを認めてもらって、適正な(お客もその価値で儲かる)値段で売るようにするのが営業の腕の見せ所でしょう。
最後に、『営業が売って初めてその企業が事業を継続できる』という点で営業の仕事は誇れる仕事です。