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2014年度 第1回 鉄鋼業界(通算43回)

佐藤 眞樹 様

1944年 米国新日本製鐵株式会社(現 新日鐵住金株式会社) 社長
2000年 鈴木金属工業株式会社 代表取締役社長
2007年12月 ディレクトフォース会員

鉄鋼業と営業の心得

鉄は地球と生命にやさしい

46億年前に沢山の星が爆発し、宇宙に飛び散った鉄を核に地球は生まれました。つまり、鉄は地球の産みの親です。又、鉄は磁気バリアを作って、有害な宇宙放射線から生命を守ったり、人間の血液中のヘモグロビンには釘1本分の鉄が含まれており、酸素を体の隅々まで運びエネルギーに変えて生命を維持しているなど、鉄と人間は切っても切れない関係が有ります。BC1500年頃ヒッタイト人が木を燃やして鉄を作る事を発見し、18世紀にコークスを使う高炉法が発明されて以来、豊富で安価な鉄は我々の生活に多方面に亘って役立っています。

鉄鋼業の歴史

第2次世界大戦が終わった1945年には世界合計で1億トンの鉄鋼が生産され、
戦後の世界経済の復興に伴い鉄の需要は年率6%で増え、オイルショックの有った1973年には7億トンにまで伸びましたが、以降21世紀に入るまでは30年間、需要は低迷し、供給過剰の中で価格は下落、世界の多くの鉄鋼メーカーが倒産ないし苦境に陥りました。生き残りを掛けて米国、欧州では鉄鋼メーカーのダイナミックな再編、統合が行われ、インドのミッタールの様に倒産しかけた元国営製鉄所の買収を繰り返し、自らは高炉1本も建てずに、世界1の生産量を誇る鉄鋼メーカーを作り上げる新しいビジネスモデルを生み出す経営者も出て来ました。21世紀に入ると中国を始めBRICS諸国の経済がテークオフして、鉄の需要は年率6%近い伸びで2013年には略倍増の16億トン近い生産量となりました。日本鉄鋼業はそうした環境下で30年以上、量的には世界NO2の位置を占め、品質、研究開発、省エネでは世界NO.1の位置を保っております。特に省エネ(=CO2削減)では業界として1970年以来5兆円の環境、省エネ投資を行い30%ものCO2排出を削減しました。この日本の技術を米、欧、韓、中などの国々に移転するだけで3億トンものCO2を削減出来る可能性が有り、目下、技術移転に積極的に取り組んでいるところです。

鉄鋼業の経営

鉄鋼の国内需要は将来低減すると予想される中で、BRICS諸国を中心に世界需要は益々増大することが予想(2020年で20~21億トン)され、日本の鉄鋼メーカーはこれまでの様に、国内で作って輸出するやり方から、自ら需要の有る市場に出て行って、工場を作り、現地で供給する作戦に切り替え、世界各地に単独ないしジョイントベンチャーを作って、自動車、建材、エネルギー分野向けを中心に拠点作りを進めているところです。こうして、大メーカーに限らず、中堅中小メーカーも、正にグローバル戦略を競って推進しているところです。
「経営とは顧客の創造である」とは、ピーター・ドラッカーの言葉です。新規にお客さんを作る事や偶にしか買ってくれないお客さんをリピーターにする事が顧客を創造する事だとしたら、彼は「経営とは営業である」と言っている訳です。又、会社の収益は「収益=(価格―コスト)X数量」で表されます。数量が増えれば固定費が下がる事を考えると、収益を増やすのも減らすのも営業次第、正に営業は経営そのものなのです、営業を希望される皆さんは自らが経営を担っているのだと言う自覚と誇りを以て進んで戴きたいと思います。そして是非、将来、語り草になる様な伝説を二つ三つ作って欲しいのです。皆さんが配属される営業部門には必ず、これこれの商売はこうした苦労を経て作られたのだと言う様な伝説が幾つか有る筈です。先輩の作った伝説から学び、自ら伝説を作る事が営業マンとしての成長に繋がります。
私が最後に勤めた会社は鈴木金属工業と言い、材料の線材を新日鐵から買い、伸線、熱処理加工してワイヤを作り、バネメーカーに収めます。バネメーカーで作られたバネは自動車メーカーでエンジンに組み込まれます。小が大を食う買収により、当社は日、米、欧、中の4か所に工場を持つ、国内、世界シェア共に5割と言うニッチな世界のグローバル企業です。

鉄鋼業の営業(私が学んだ営業9つの心得)

今日は私の経験と私の居た職場で伝説を作った先輩諸氏から学んだ営業の心得を9点に纏めてご紹介したいと思います。

【No.1】お客様との信頼関係の構築です。絶対にウソはついてはいけません。言えない事は言えないとはっきり言うべきです。信頼関係を築く切っ掛けは、お客様の趣味を自分の趣味として、「気心が知れ合う」関係を作りあげることです。同じ趣味の人と話すのはお互いに楽しいものです。
【No.2】一歩進んで本音で話せる関係を築き上げ、お客さまの抱える問題やニーズを把握する事です。「実は相談が有るのだが」と言われたらしめたものです。
【No.3】お客様のニーズや抱える問題を実現する為には社内に対し、お客様の代弁者(Buyer’s Agent)に徹する事です。社内の抵抗はかなり大きいです。その為には社内的にも「あいつが言うなら仕方が無い」と言う信頼関係を予め作っておくことが必要です。
【No.4】出来あがった信頼関係は大切に育み、一生掛って育て上げる事です。某二輪車メーカーさんのマン島でのオートレースの連戦連勝へのお手伝いが、信頼関係を築き上げ、自動車エンジンの弁バネ鋼種の革命に繋がることも有りました。出来ればお客様との間でホットラインを作っておければ、最高です。
【No.5】信頼関係の構築は目の前のお客様(購買部門)も大切ですが、自社の製品が使用される(加工される)お客様の工場、現場、技術屋さんとの信頼関係構築がもっと大切です。そして更に奥深く、お客様(バネメーカー)だけでなく、お客様のお客様(自動車メーカー)と接点を持ち、信頼関係を築き上げる事がとても大切です。
【No.6】製品の品質が悪いのは工場でなく、営業の責任と自覚せよと言う事です。
納めた製品の品質に対するお客様の不満やライバル企業の評価などの情報を把握して工場にフィードバックし、改善策を作らせ、品質に作り込ませるのは正に営業の責任であり、もし品質クレームが起こったら、それはお客様の工場や技術屋さんとの信頼関係構築のビッグチャンスと捕えて、営業が前面に出て、技術陣をリードする事が大切です。
【No.7】自分の立ち位置を知れと言う事です。自社の販売シェアやライバル企業の評価など、次の目標を作る為には綿密な分析評価は欠かせません。
【No.8】大きな目標を作り、それを実現する為に、有りっ丈の情熱を注ぎ込めと言う事です。情熱が無くては、何も実現しません。お客様の工場の一隅に自分の机を貰えるようになったら伝説は一つ完成です。
【No.9】悪いニュースは直ぐに上司に報告しろ、抱え込むなと言う事です。担当者が解決できない事も、上司には解決出来る可能性が有ります。会社としての対応も早く適切に出来ます。報告したら叱られるかも知れません。でもそれは一時です。一人で悩むのではなく、報告してしまえば、聞いた上司も一緒になって考えてくれます。貴方の悩みは半分になります。この項を最後に書きましたが、これは重要度が低いと言う事では全くありません。

ダイナミックでグローバルな鉄鋼市場での営業の心得とは輸出営業であっても国内営業であっても、そして今後、増えて来る海外現地での営業でも、その根底に在るものは全く同じだと思います。又、消費者に直接買って戴く営業でも、営業の本質は同じだと思います。

これからは益々グローバル化が進みます。海外に行かないから英語は関係ないなどと思っていると、自分の会社が外国人に買収され、上司が中国人、部下がベトナム人等と言う事はザラに有る時代に成りますし、外国語を社内公用語とする日本の会社も沢山出て来ました。皆さん、国際共通語としての英語を学びましょう。不得意な方も今からでも間に合います。最後に私が皆さんに贈りたい言葉は、1944年6月、ノルマンディー反攻作戦開始に当たり、英国のウインストン・チャーチル首相が連合軍将兵に贈った次の言葉です。

『It’s late, but not too late. ( 遅い!しかし遅すぎはしない! )』