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日本アイ・ビー・エム株式会社(IBM)による特別講義(「AI概論」)


IBM 河井裕氏

昨年度に続き「AI概論」(国際学部高橋教授)の授業に日本アイ・ビー・エム株式会社(IBM)の河井裕氏をお招きし特別講義を実施しました。今年で2年目となるこの講義では、AI (Artificial Intelligence; 人工知能)の最前線やIBM社の取り組みを学生向けにお話いただきます。6月24日(木)までの全4回で実施します。

人工知能(AI)について基礎から

第1回(6月3日)の講義では、はじめに「AI」「機械学習」「Deep Learning」などの言葉が紹介されました。「AI」のように最近よく耳にする言葉がある一方、「機械学習」「Deep Learning」のように具体的なイメージの湧かない言葉もあるかもしれません。この講義では、AIに関連する言葉の意味、AIの活用事例などを学び、基礎知識をしっかり理解し、身につけていきます。

人工知能の歴史を見ると、過去に「AIブーム」と呼ばれる現象があったことが分かります。1960年頃に第一次、1980年頃に第二次、そして現在の第三次AIブームです。第一次・第二次ブームでは、人間の脳を模したAIが考案されたり、統計・確率を採り入れたり、様々な方法が検討されました。しかし、私たちの生活や仕事を劇的に変え、革新をもたらすような影響はありませんでした。AIが「学習」を行うのに必須となる特徴量と呼ばれるデータの扱いに課題があったことが知られています。

人口知能(AI)の歴史
(第1回講義資料を参考に作成) 

特徴量とは、AIが分類や予測を行うのに必要なデータであり、判断材料となるものです。例えば、画像から人と犬を見分ける(分類する)場合では、両者の外見上の違い(二本足、四本足)は判断材料となり、特徴量として使えそうです。これまでは、これらの違いをルール化するなどをして、人が予めAIに与えることが必要でした。第三次ブームでは、AIが特徴量を自力で獲得し、分類や予測をすることができるようになりました。これが、深層学習(Deep Learning)です。

深層学習(Deep Learning)の活用事例

深層学習は、現在、私たちの生活や仕事でどのように活用されているでしょうか。講義では、画像から建物の亀裂や破損を検知したり、腫瘍が疑われる箇所を示したりすることができる画像認識の技術が紹介されました。また、画像を見て簡単な説明文を加えたり、風景や肖像画のような画像を生成することもできるようです。今後は、画像認識や画像生成、その他のAI技術をどのように活用していくかが問われます。

大量のデータを素早く処理する技術

第2回(6月10日)の講義は、AIの発展に伴うコンピュータの革新について学びました。AIがデータを処理する時、コンピュータの内部では大量の計算が行われます。また、一般にAIが高い性能を発揮するには、大量のデータを必要とします。普段、私たちが仕事や勉強、趣味などでコンピュータ(PC)を利用する場合、主にCPUと呼ばれる計算処理装置が働いています。CPUは複雑な計算を逐次処理(順番に処理)することに優れていますが、大量の計算を行うと長い時間が掛かってしまう場合があります。AIを活用するためには、コンピュータの技術的な革新も必要だったのです。

CPUとGPUのイメージ  
(第2回講義資料から抜粋)  

ここで、General-Purpose Graphics Processing Unit (GPGPU。以下GPU) の活用が紹介されました。GPUでは、処理を実行するコアと呼ばれる装置がGPUプロセッサの内部に数百から数千個も設置されており、これらを同時に働かせることで単純な計算を同時に処理することが可能になるそうです。複雑な計算ができるが数個のコアしか内包していないCPUと、単純な計算をする小さなコアを数百から数千個を内包するGPUでは、どちらの処理速度が勝るでしょうか。AIで必要とされる行列積の計算を考えた場合、GPUの方が効率的に処理できる、というお話でした。

AIアプリケーションで人の強みを発揮

第2回のもう1つのテーマは、IBM社が展開するアプリケーションの紹介です。深層学習(Deep Learning)の開発には、高度な数学的な知識を必要としますが、特別な訓練や研究、経験を重ねた人だけが扱える技術では、広く社会に普及させるのは難しいでしょう。IBM社では、現場で働く人が深層学習の知識がなくても扱えるアプリケーションを提供しています。

熱心に聴き入る学生たち

今回、紹介されたのは、Deep Learning技術を用いて画像認識を行うツール (IBM Maximo Visual Inspection)と、自動化された機械学習技術を用いて数値や文字データから分類や予測を行うツール(H2O Driverless AI)です。必要に応じてこれらを導入し活用することで、現場の課題解決に役立ちそうです。ここで重要なことは、人がAIに学習をさせるための様々な事前の設定や準備が、できる限り自動化され、分かりやすくなっていることです。例えば、AIのツールが特徴量を自動で生成や選択することや、予めニューラルネットワークが用意されていること、またプログラミングのスキルを必要とせずGUIのみで使用可能であることなどです。全業種の全ての人がAI技術に深く精通することは現実的ではありません。これらのツールを利用することで、解決したい課題の設定、結果の判断、意思決定など、本来の業務に注力することができるようになります。人の強みを活かしてAIを活用するという新しい取り組みが提案されているのではないでしょうか。

2回の講義を終えて、学生からは「AIは怖いものではない」「AIの今後の活用が楽しみ」といった前向きな感想も聞かれました。次回も新鮮な驚きがあり、好奇心を深める講義になるでしょう。

報告:IR・広報室