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第3回 国際交流講演会in敬愛フェスティバル

三幣学長のあいさつ

第3回 国際交流講演会が開催されました

平成24年度の国際交流講演会は、敬愛フェスティバル期間中の11月11日(日)午後1時より、稲毛キャンパスで開催されました。当日は肌寒い天気にも関わらず、熱心な聴衆の方にお集まりいただき、大変意義深い催しとなりました。今回は、最近までイギリスとアメリカにそれぞれ留学していた本学の二人の先生に、留学先での経験をもとにお話しいただきました。


「英国での日々」(経済学部 高木朋代准教授)

高木准教授は英国風の装いで登場

一人目は、この夏までイギリス・オックスフォード大学に2年間留学していた経済学部の高木朋代准教授で、タイトルは「英国での日々」。講師が一方的にしゃべるのではなく、聞き手の希望をできるだけ尊重したい、という英国流のスタイルで、まずはメニューを聴衆に提示します。

(1)多民族国家(英)vs単一民族国家(日)
(2)平等主義(日)vs排他主義(英)
(3)規則(日)vs個別対応(英)
(4)性悪説(日)vs性善説(英)
(5)NHS(英)vs国民健康保険制度(日)
(6)英国の年金vs日本の年金
(7)すする文化(日)vsふき取る文化(orかむ文化。英)

いずれも日本とイギリスを比較するもので、それ以外の注文にもできるだけ応えるようにするとのことでしたが、会場からの希望は(1)(5)(6)と、英国流「修理と管理」について、というものでした。
まずは、年金についての話。日本では社会福祉先進国というイメージのあるイギリスですが、果たしてどうなのでしょうか?OECDの統計によれば、所得代替率(それまでの収入をどの程度年金でカバーできるかという指標)で見ると、日本は平均よりずいぶん低く30%台ですが、イギリスはもっと低く最下位なのだそうです。イギリスでは年金は全員加入ではないため、受給資格のない人が大勢いるのが理由です。
では、日本の健康保険に当たるNHSはどうでしょうか?こちらは年金と違って全員加入で、しかも医療費は基本的にタダ。6ヶ月以上居住していれば外国人も対象になるという、実に素晴らしい制度のように聞こえます。ところが、実態は…経済的に余裕のある中流以上の人は利用せず、自費で高い医療費を払って医者にかかっているそうです。その理由は、サービスを受けるまでさんざん待たされるからで、「それでは3日後に来てください」。下手をすると手遅れになりかねませんが、医療費を支払うことのできない低所得層にとっては、ありがたい制度だと言えます。
高木先生は、英国の素晴らしい社会保障制度を学ぶつもりで留学したそうですが、全員が加入している日本の年金や医療制度を再評価するという、何とも皮肉な結果になってしまいました。日本で近年進められているバリアフリー化にしても、イギリスの公共施設や交通機関での対応は遅れていて、若者が多い大学でも積極的ではないそうです。
次に、会場からリクエストのあった英国流の修理と管理について。高木先生は大学の寮に滞在していたため、特に困ることはなかったそうですが、自分で家を借りるなどして生活する場合は、それはもう大変だとか。もともと古い家が多く、頻繁にメンテナンスが必要になる上、修理に来る人は言われたことしかやらないため、一度では済まないことが少なくないそうです。背景にあるのは、イギリスが階級社会だということ。管理する人間と実際に仕事をする人間がきっちり分かれているために生じる問題なのです。
イギリスが階級社会だということは、旅行していてホテルに泊まる場合などにも必ず体験することで、性別だけでなく必ず「タイトル」を記入する欄があり、それにより待遇がまるで違ってくるとのこと。高木先生はprofessorだったので、ずい分と優遇されたそうです。大学の中では、身分を気にせず仲良く付き合おうという動きがあるそうですが、大学の外に出るとまるで雰囲気が違い、身分(階級)を越えた恋愛はまずないとか。
一方、民族や移民に関しては日本の方がずっと閉鎖的で、オックスフォードでも半分は留学生だそうですが、残念ながら日本人は非常に少ないとのお話でした。
「変わりゆくアメリカ-1980年代から2

「変わりゆくアメリカ-1980年代から2012年-」(国際学部 増井由紀美准教授)

アメリカ経験豊富な増井准教授

二人目は、国際学部の増井由紀美准教授。1980年代に6年間、アメリカに留学していた経験をお持ちで、その折に日本語の教鞭を取ったイェール大学に1年間留学してきたばかりです。イェール大学はニューヨークから電車で2時間のニューへイブンという街にあり、増井先生が研究している歴史学者の朝河貫一氏がかつて学んだ大学です。講演のタイトルは「変わりゆくアメリカ」で、80年代と現在のアメリカを比べるとどういう違いがあるか、という内容でした。
まずは、到着後まもない、2011年秋の99%運動について。アメリカでは上位1%の富裕層が収入を独占していることに抗議する「ウォールストリートを占拠せよ」運動が盛んに展開されましたが、ニューへイブンにも飛び火して、町の中心部にある三つの教会の北側に広がる公園を「私たちは99%」の人が占拠し、テントと横断幕を張って生活していたそうです。これらは、大学が卒業式を迎える時期になって取り去られました。
増井先生は、80年代にアメリカで経験したことをもとに、『スウェットシャツをバックシートに』という本をお書きになっていますが、今回留学するに当たって読み直してみたそうです。すると少しも内容が古くない、つまりアメリカの変わることのない、本質的な部分をしっかり捉えていたことを発見したそうです。今回、久しぶりにニューへイブンで生活者として暮らしてみて、現地にずっと住み続けている人間にはわからなくても、外部でアメリカを観察している者には気づく変化があったそうです。それはどういうものでしょうか?
折しも、アメリカではオバマ大統領が再選を果たしたばかり。勝利演説の中で「白人も黒人もヒスパニックもアジアもない。民主党とか共和党とかでもない。ゲイもストレートも障害者も健常者もない」という発言が話題を呼びましたが、アメリカにおける変化とは、こうした同性愛者などのマイノリティを受け入れる姿勢が社会に見られるようになってきたことだと指摘します。人種や宗教については、以前から差別を解決しよう、違いを認め尊重しようという社会の「準備」が進んでいて、それが黒人大統領の誕生につながったわけですが、ゲイに市民権を与えることを大統領が公言するというのは、20年前にはおよそ考えられなかったことで、この間の大きな変化を示していると言います。
例えば、20年来の付き合いのある友人から、娘さんが長年一緒に暮らしていた女性と結婚したという話をされたそうです。今回初めて聞かされた話だったと感慨深げでした。ブロードウェイで観た演劇にも、アメリカの変化を象徴する、ゲイマリッジを扱った作品があったそうです。息子に早く結婚してほしいと願っている母親が息子に「ボーイフレンドとの結婚を心待ちにしている」というような台詞があったとか。また、テネシー・ウィリアムズ作の『欲望という名の電車』と言えば、マーロン・ブランドのような白人でマッチョな俳優がスタンレー役を演じるのが定番だったわけですが、今回観たのはその役を黒人が、そして相手役のステラをヒスパニックが演じるという斬新なものでした。興業である以上、観客を集められないものは上演されないので、これもマイノリティに対して社会が進化している証拠なのだそうです。宗教の面でも、例えば20年前は賛美歌が主流だったクリスマス・ソングが、市が主催するイベントではジングルベルなど宗教色の薄いものに変わっていて、留学はこうしたアメリカ社会の変化を体感する貴重な機会となりました。
話はまだまだ尽きないのですが、残り時間が切迫してきたため、大急ぎでスライドを見せていきます。でもサービス精神が旺盛でついつい説明が詳しくなり、結局予定の時間をかなり超過してしまいました。

質疑応答

会場からは鋭い質問が

少なくなった残り時間は、会場からの質疑応答に当てられました。最初の質問は、「オバマ演説ではイスラムには言及していなかったが、入れるわけにはいかない事情があったのか?」というもの。これに対しては、増井先生から「9・11以降、アカデミックではイスラムに関心を持つようになっている。また、コミュニティーレベルではムスリムと共存しているし、分かり合おうとする努力をしている。つまり方向性としては、受け入れる方に向かっている」との答え。一方、高木先生からは「イギリスでも非常にセンシティブな問題で、アメリカから逃げてきたイスラム研究者がいたり、シンポジウムでも厳戒態勢が取られたりしている」との補足説明がありました。
続いての質問は、「ゲイが認められるようになって、男同士の友情なのか、それとも特別な関係なのか、距離の取り方が難しくなったのではないか?」という、これまたシビアな内容。これに対して、増井先生が「問題は山積しているが、方向性は前向きで支持を受けている」、高木先生が「オックスフォードではゲイは話題にもならない。でも女性の方はそこまで市民権を得ておらず、男女差が激しい」と答えたところでちょうど時間となり、第3回の国際交流講演会は幕を閉じたのでした。