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自治体における政策提言型インターンシップ(埼玉県春日部市)


春日部市役所での提言発表の様子

経済学科では自治体職員を目指す学生に向けて、3年生の夏休み期間に政策提言型のインターンシップを実施しています。このインターンシップは「地方自治論演習」という科目の一環です。単なる職場体験・業務体験だけではなく、事前学習により自らテーマを設定した上で、10日間の庁舎での実習期間中に職員の方の指導のもとでヒアリングや資料の収集を行い、実習終了後も1ヶ月以上かけて政策提言の報告書をまとめるというものです。

通常の自治体インターンシップに比べて期間も長く内容もハードですが、参加した学生はその分達成感と充実感を感じられるようです。また、職員の方から直接指導をいただくことができ、自治体の業務をより深く理解することができます。
昨年はコロナ禍のため中止となってしまいましたが、春日部市の政策課のご協力により1年ぶりに再開することができ、経済学科3年の渡邉拓海さんが実習を行いました。今回はその様子をご紹介します。

テーマは外国人居住者と地域住民の多文化共生

緊張した面持ちで発表する渡邉さん

庁舎での10日間の実習期間が緊急事態宣言の発令時期と重なってしまい、一部を自宅での報告書作成に振り替えることとなりましたが、担当職員の方からは登庁時のみならず、自宅での作業時にもメールやオンラインなどを通じてアドバイスをもらうなど、たいへん丁寧にご指導いただいたようです。実習期間終了後、中間報告を挟んで約1ヶ月ほどかけて報告書を完成させました。

渡邉さんは事前学習の段階から外国人居住者と地域住民の多文化共生に関心を持っており、埼玉県内の自治体の取組状況等を調べ、交流を促進するイベントなどの実施に興味を示していました。担当課へのヒアリングや提供資料の検討していく中で、とくに災害発生時の外国人対応の問題に焦点を絞り、「防災対策と市民間共助」というテーマで報告書をまとめることとなりました。

(写真左から:春日部市総合政策部長、総合政策部次長)

インターンシップの締めくくりとして9月29日に提言発表会が行われ、渡邉さんの提言が発表されました。
外国人居住者に対する防災意識のアンケート調査結果から外国人居住者の側に「外国人を交えて地域で防災避難訓練」や「近隣住民との連絡網などの強化」、「災害時の母国語での情報発信」といったニーズが有ることに着目し、2つの提言を行いました。
  1. 市民参加で行われている地震体験車「ゆらりん」の体験イベントを、日本人・外国人がともに参加する多文化防災イベントとして開催することで、地域住民とのコミュニティ形成の場を設け、外国人を含む市民間共助の関係を作る。

  2. 災害時の多言語対応として、外国人が多く集まると予想される避難所に「ポケトーク」等の翻訳機器を導入する。また自治体職員および市民も交えた翻訳アプリ等の講習会を積極的に行い、AI技術を用いた多文化共生自治体を目指す。

提言発表会を終えて

春日部市の総合政策部長は災害時の対応の重要性と提言の着眼点を評価くださり、総合政策部次長からは東日本大震災の際に春日部市においても大量の帰宅困難者が出た経験などを紹介いただきました。また防災対策課を含め職員の方々から、市の防災イベントとの整合性や観光事業などで整備されている翻訳機の活用による実現可能性などについて、貴重なコメントをいただきました。

(写真左から:八木准教授、渡邉さん、春日部市総合政策部長、総合政策部次長)

渡邉さんは報告中は少し緊張した面持ちでしたが、様々な評価やコメントをいただいたことで、これまでの先輩たちと同様に達成感と充実感を感じてくれたようでした。今回書ききれなかったことについては、この経験を活かしてぜひ卒業論文に昇華してほしいと思います。

 

「地方自治論演習」におけるインターンシップは、コロナ禍の中断を挟んで今年で10回目となりますが、春日部市役所(政策課)での政策提言型インターンシップは、今回でいったん一区切りとなります。
本学からは、これまで8名の学生がお世話になりました。実習生を受け入れてくださった総合政策部の皆様、業務のお忙しい中指導に当たってくださいましたすべての職員の皆様に、あらためて心より感謝申し上げます。
報告:八木直人(経済学科 准教授)編集:IR・広報室