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活躍する卒業生たち(3) 松本和也さん(オーストラリア在住)

 卒業生の紹介・第3回は、オーストラリアでご活躍中の松本和也さんをご紹介します。

 松本さんは、国際学部在学中の2011年からオーストラリアのジェームズクック大学に留学し、その翌年、卒業と同時に、現地で就職しました。その後も同国で着実にキャリアアップを図っておられます。現在は、VON BIBLA MOTORS GOLD COAST PTY LTD社にお勤めです。

学生時代

聞き手:松本さんは社会人入試での入学でした。

松本:大学に入る前はいくつかアルバイトで仕事をしていました。それまでの人生経験やインドでの旅をきっかけに、小学校の先生になって能動的なこどもを育てたいと考えたわけです。

最初は地域こども専攻(現こども学科)だったのを、途中で国際学専攻(現国際学科)に変更しました。

松本:小さい頃から外国に住みたい、世界をもっと知りたいという気持ちが強く、大学に入る前にはインドに一人旅に出かけたことがあります。日本にいると暗い話題やしきたりが多くて、知らず知らずのうちに希望や意欲を失っている。でも、海外を旅していると、人々が実に生き生きと楽しそうにしていて、元気をもらっている自分を発見します。在学中に、日本で教師になることに違和感を覚える一方、留学生の友達が大勢できて、彼らと一緒にいると本当に楽しかった。幸い、国際学部の中で専攻を変えるだけで済んだので、変更を決めました。

松本さんは目立っていた、と言うか、ギラギラした印象があって、異彩を放っていました。最初は社会人経験がある人は違うなという程度の認識でしたが、やがていい意味で非常に貪欲なことに気がつきました。

松本:国際学部には留学生が多く、いろいろな国の友人ができました。彼らのものの見方、やり方は実に参考になりました。

それはどういうことでしょうか?

松本:例えば、時間の使い方などです。留学生は日本にいられる期限が決まっているので、そこから逆算して、いつまでに何を達成するかという、目的意識がしっかりしている。日本人にもそういう人はいますが、少数派です。また、彼らは「第二言語ができる」ということが、将来の選択肢を広げ、豊かな生活につながることを知っていて、「賢く」外国語を学んでいます。そういう物事への取り組み方のようなものを間近で見て吸収できたことが、オーストラリア留学では生きました。

留学については、後ほど話をうかがいます。私が個人的によく覚えているのは、国際学部の講演会で米山博子さん(※1)をお呼びした時に、ずいぶん熱心に質問をしていた姿です。

松本:アフリカで、日本では考えられないような苦労の連続で生活してきた方ですから、いろいろヒントを貰おうと思って、根掘り葉掘りお聞きしました。自分にとって未知の話で新鮮でしたし、実体験を直接聞けるめったにないチャンスでしたから。特に、何か困ったときの解決の仕方は興味深かったです。人生は問題が起きるものですから、人の経験からアイデアを利用していく発想も大切だと思います。

※1 ガーナ在住歴20年を越える、ガーナ人以上にガーナを知り尽くした日本人。ガーナ大学で日本語を教えるかたわら、奴隷貿易について子ども向けにわかりやすく書いた絵本『サラガのバオバブ』を手がけた。

オーストラリア留学

大学4年のときに、オーストラリアに留学しました。

松本:敬愛大学が長期留学制度を導入していたことが、そもそものきっかけですが、実は留学前にオーストラリアに下見に行って、永住権取得にチャレンジしようと決めて帰ってきました。

最初から「確信犯」だったわけですね。1年後に「オーストラリアで就職を決めたので、このまま日本に帰国しなくてもいいか」という連絡が来たときは驚きました。国際学部では1年間留学しても4年間で卒業できる制度を導入しているので、単位上は特に問題はなかったのですが、前代未聞でしたから。留学中はどんな生活をしていたのですか?

松本:永住権を取るにはIELTSのスコアが申請条件の1つですから、とにかく頑張って「賢く」英語を勉強しました。当初の予定で9か月、永住権の取得が見えてきたので3か月延長して、合計1年間ジェームズクック大学の英語コースに通い、留学前に4.0(一般)だったIELTS(※2)のスコアが、5.5(アカデミック)まで伸びました。

それは凄いですね。先ほどから話に出ている「賢い」英語の勉強の仕方とは、具体的にどういうものなのか、教えてもらえますか?

松本:リスニングとスピーキングはある程度の時間がかかると判断したので、ふだんの生活や学校で意識して経験を積むようにしました。一方、リーディングとライティングは短期間でもスコアを伸ばすことが可能だと思ったので、集中的に取り組みました。スコアが上がるように、実際にテストの時間を計って、地道に何度も繰り返し練習するわけです。学校にIELTSの採点をする先生がいたのも大変幸運で、お願いしてライティングを何度も添削してもらいました。詳しいことは、フェイスブックに「長期留学レポート」を書いているので、こちらを見てください。

アルバイトもずいぶん熱心にしていたと聞きました。

松本:アルバイトは生活の助けになるだけでなく、英語力を鍛えるのにも役立ちます。初めは緊張しましたし、さっぱり理解できないこともありましたが、実際に言葉を使って働くことは一番の自信になります。放課後と週末にアルバイトを入れるようにして、24時間ひたすら英語漬けの毎日にしました。学校の先生などが、仕事を手に入れるには経験が多い方が有利だと話していましたので、永住権や先のことを考えて、掃除のような仕事でも一生懸命やりました。

外国で初めてのアルバイト時に知り合った人に、永住ビザをお願いしたそうですね。

松本:私が取得したビザは、「スポンサービザ」と呼ばれているもの(※3)で、結婚以外では最短で永住権取得が可能です。初めに働いた日本食レストランでたまたま接客したお客さんが、3店舗を持つ飲食店のオーナーでした。その後仕事を変えて、彼の店で働き出しました。そして、ちょうどシーフードの新しいビジネスを始めようというタイミングで、その新しいシーフードビジネスの仕事に引っ張ってもらったわけです。最初にスポンサーを頼んだ時は断られましたが、あきらめず何度もお願いして、ようやく半年後に了解を取り付けることができました。僕が相談していた移民エージェント兼弁護士が、たまたまオーナーと取引があったことも、うまくいった要因の1つだったと思います。

この永住ビザは1年間で取得できるものなのですか?

松本:1年というのは記録的だと思います(笑)。他に1年で達成できた人を、個人的には全く知りません。僕が出会った永住権を取った日本人たちに聞いても、皆さん否定的な意見でした。でも、可能だということを証明しました。私にとって誇りですし、大きな自信になりました。

※2 イギリスや英連邦諸国への留学や永住権・ビザ取得の際に必須となる英語検定試験。進学希望者向けのアカデミックモジュールと、それ以外の人向けの一般モジュールの2種類がある。

※3 正式名称は‘Regional Sponsored Migration Scheme(Class AN, Subclass 119) visa’。オーストラリア政府が、人手不足が深刻な地方エリアに、雇用主が求める働き手を増やす目的で導入している。スポンサーとなる会社と2年間以上働く契約を結ぶことが条件。役職ごとに申請基準があり、松本さんが申請した‘Supply and distribution manager’(仕入れ担当の責任者)の場合、IELTSスコア(一般モジュール)4.5以上(2012年当時。現在は変更されている)、ビジネス関係コースと四年制大学の卒業資格、仕事の経験(日本でのアルバイト経験も含まれる)の証明、無犯罪証明書、戸籍謄本(家族構成含む)が必要とされた。

オーストラリアでキャリアアップを目指す

日本ではなく、オーストラリアでキャリアアップしようと考えた理由は何ですか?

松本:日本はずっと景気が悪くて、しかも留学の直前に東日本大震災があったりして、将来に希望が持てそうな状況ではなかったので、明るい希望が持てる国に自分が移動すればいいじゃないか、と思い至ったわけです。実際、オーストラリアは景気もよく、金利も高かったので、学生時代のアルバイトだけでも、かなり貯めることができました。いずれ結婚すれば、自分の子供に伸び伸び育つ環境と幅広い選択肢を与えられます。自分や家族がより有利な条件で、より豊かに暮らすことができるチャンスがある国です。

松本さんから見て、オーストラリアはどんな国ですか?

松本:暮らしがシンプルで、家庭と自然が愛されている国です。殺人事件や自殺といったニュースはほとんど目にしません。教育システムが機能していて、社会が健康だと感じます。人々からは、自然で何にも縛られていない印象を受けます。授業を受けていても、先生方は冗談の他に、彼氏や夫、ドラッグについて、日本ではあまり話さないような内容でも、オープンに話していました。明るく好きなことが言えるこういった環境で、人は伸び伸び育つのではないでしょうか。

実際に暮らしてみて、どうですか?

松本:前向きに自分の生活に集中できる。年齢や立場の隔たりなく議論できる。気楽で明るい人々といい気持ちになれる。仕事より家族や友達を優先できる。大きな家に住める。服装や時間に余計な気を使わなくて済む。景気が良い。お金が貯まりやすくのんびり生活できる。おいしいワインが安く飲める。美しいそよ風と青空と星空に癒される。地震や放射能の心配がいらない…など、私にはこの土地が合っていて、いいことずくめです。将来はオーストラリアと日本のどちらでも働けるし、住むこともできます。英語ができれば選択肢が広がりますし、自分と家族の将来には、十分に明るい可能性が広がっていると感じています。

オーストラリアで働くのは、日本とはどういうところが異なりますか?

松本:オーストラリアでは、経験が重要視されます。手に職を持っていることも、非常に有利な強みになります。電気技師や配管工の中には年収1千万円以上で、弁護士よりも稼ぐ人もいます。ということで、留学以前から計画していたキャリア替えに成功して、今年から自動車の大きなディーラーに勤務して、自動車整備工の見習いをしています。仕事帰りに制服を着たままショッピングモールなどに寄ると、声をかけられることが多く、日本のような職業に対する偏見がないことが、実感できます。4年経てばメカニックとして一人前になるので、まずはそれが目標ですが、その先はメカニックとして鉱山の仕事に就き、さらなるキャリアアップを考えています。

着実にキャリアを積み重ねてきて、順風満帆という感じですが?

松本:そんなことはありません(笑)。永住権をスポンサーしてもらった仕事では、取得後1か月もしないうちに一度クビになっています。英語のコミュニケーション能力不足によって、立て続けにクレームを受けたことが理由です。その後、何とか職場に戻ることができましたが、ビザがキャンセルになる恐れがあったので、気が気ではありませんでした。「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったものです。永住権取得後の最初の1年間は浮き沈みの連続で、別の仕事でもクビを経験しました。これからも希望することとしないことが起こるでしょう。それが人生だと思いますから。

これからキャリアを積み上げようという後輩たちに、アドバイスをお願いします。

松本:僕は学生時代のいくつかの活動から夢の叶え方を学びました。日常と旅からの気づきと、敬愛大学在学中から積み重ねてきたもので、この先もチャレンジして行きます。あるのは、夢を叶えていくワクワクした気持ちです。過去に学び、先を見据えて、手を抜かず今できることをやり続ければ、夢はヒットできます。アドバイスするとしたら、イニシアティブを意識して物事をやっていくと良い結果につながる、ということでしょうか。それが、賢いということだと思います。まあ、僕は自分を突っ込ませて、チャレンジしていくのが好きですから。そうすると、毎回新鮮な気持ちでいられて楽しいんですよね(笑)。最近、やっとできた台湾出身の彼女も、僕のそういう姿勢を見て、小学校の先生みたいなことを話すと言っていました。そこが僕らしくて、とても好きだと言ってくれています。

話が思わぬ方向に行ってしまいそうなので、無理やりまとめさせていただくと、世界は広い、青年よ大志を抱け、といったところでしょうか。本日はいろいろと貴重な話をどうもありがとうございました。今後のご活躍と、幸せな家庭を築かれることを、心より願っています。
(聞き手:大月隆成)