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ホーム  > 経済学部だより  > 飯野ゼミ(専門導入演習)紹介

飯野ゼミ(専門導入演習)紹介

我々の2年ゼミは金曜日の4限目(2:40~4:10)。1週間の終わりでみんな疲れているはずの時間帯です。でも、みんな元気いっぱい。楽しそうにゼミに参加しています。私もこの日9時から始まる1限から4限までぎっしり授業がありますが、この時間が楽しみです。少しも疲れたと感じません。彼らが大好きです。
従来、経済学部のゼミは1年ゼミ、2年ゼミはそれぞれ別の先生、3、4年専門ゼミだけ一貫持ち上がりで運営してきましたが、今年から2年生から4年生まで持ち上がりとなりました。彼らとは3年間の付き合いとなります。3年冬休み頃から就職活動で手一杯になってしまうこの頃。卒論を落ち着いて書くことが出来ません。そこで2年生から長い論文を書くための準備を始めようというのが当初の目論見でした。
しかし、2年ゼミを開講してみたらゼミのみんな:「文章を書くことは家でも出来る。けど議論することはゼミでしかできない」。なるほど。興味あることを追求するのが一番勉強になります。それからは、ちょっと先までのメニューをみんなで決めていくこととしました。その結果、これまで行ったゼミのうち、半分はディベイト、グループ・ディスカッションで占められることとなりました。
最初は誰でも発言出来るようなテーマにしていましたが、だんだん経済学部だもんね、ということでテーマを社会性のあるものに高度化していきました。グループ・ディスカッションは就職活動の中でよく使われるといいます。私は「採用担当者は『お題』(ディスカッションのテーマ)だけ言い渡して後はメモ取りに徹するらしいよ。私も黙ってるからね」と、目立たぬ隅っこに陣取り、ひたすらキーボードを打ち続けます。
司会が名乗り出ます。自然な感じで「オレやります」と司会初めてのSJ君が言うと、みんな頑張れよ、という感じで前へ送り出します。司会は気負わず、淡々と、「じゃ、○○君から順番に意見を言ってって下さい」。ブレインストーミングと言っているが、まずどんなレベルでもいい、前の発言と関連が無くてもいいから意見を出していき、出た意見をメモっておき、グルーピングしたり整理したりして次につなげていくやり方をとることが多いです。今回、司会はその手法をとりました。
意見がそれぞれ出ますが、まず「ニート」の定義や原因、対策、ニートの統計的把握についての発言が続きました。我々のゼミには留学生(中国)が2人います。この留学生C君とK君は、統計やニート増加の原因・対策など調べてきていました。留学生はわざわざ外国に勉強に来るだけあって意欲はあるし勉強するものごとも頭の中では全部理解しています。しかし日本人学生の省略の多い発言や微妙な速いテンポでの掛け合い、タイムリーに「縄跳びに入る」難しさから、なかなか積極的に発言出来ないものです(私もドイツ留学中そうでした)。今まで私は彼らに「流れを止めちゃってもいいから、自分の意見や質問をしようね。C君、K君が大事だと思ったことはみんなも大事だと思うに違いない。繰り返して確認する価値があるよ」と言い続けていた。今回、ばっちりテーマに関して準備することで、1つ壁を乗り越えたと思います。
ブレイストーミングが終わると、その後の進行は一挙に司会の肩にかかってきます。そのため、1周目の意見をグルーピングしてまとめて収束に向かうというパターンが圧倒的に楽です。しかし、SJ君は、「今まで出た意見を下敷きにして議論を進めましょう」と言いました。その上で、黒板に今まで出た論点をキーワードでまとめ始めたのです。こうすれば今までの流れをみんなで共有出来ます。

そうしたら、その後、今まで出なかった論点:時期によるニート増加要因の変化―自発要因、経済要因―、対人関係の問題、学校教育の問題、労働市場に入っていく時新卒しか相手にされないという問題が出てきました。その間、私は発言内容をメモる一方、ゼミ室から無線LANでつながるインターネット上で発言内容を裏付ける情報を検索します。後でコメントするためです。
この後でのコメントが教師にとってなかなか楽しいのです。学問的なコメントは、議論の中で出た概念の通常表現されている言葉を探して言い直す、事実関係の流れの整理が出来ればする程度のことです。それ以上の「講義」をしても大して勉強にはならないと思っています。最初に気付いて発言した時が最も勉強になっているのです。しかし教師は、岡目八目で議論の流れはわかります。この発言が流れを変えたな、司会を助ける発言だな、留学生にもわかりやすい表現を使ったな、などいろいろ気付きます。そういう時、「あぁいいなぁ」とちょっとした感動をおぼえます。それを素直にコメントで伝え、懸念があると思った場合も率直に伝えます。
コメントの中で司会のSJ君に、「『今出た論点を元に議論を進めよう』と呼びかけた時何も出てこなかったらどうしようって不安に思わなかった?」と聞いたら、不安は感じなかったと言います。「みんなが論点を出してくるって信じてた?」と聞くとニヤっとして「そうっすね」。