卒業生の国際協力 〜海外大学院留学(フィリピン)〜
「国際協力」も「国内協力」も根っこは同じ 伊藤 寛子
麻薬中毒者のリハビリセンターで働く、
ソーシャルワーカーの友人と一緒に
麻薬中毒者のリハビリセンターで働く、 ソーシャルワーカーの友人と一緒に

 フィリピンでの生活を2年経て振り返ってみると、フィリピンに留学したことによって、私の国際協力に対する意識が変化していたことに気づかされます。

 入学当時は、国際協力を現地で学ぶためにソーシャル・ワークを専攻し、フィリピンにどっぷり浸かるつもりでした。しかし、実際に講義が進むにつれ、母国である日本を振り返る機会を多く与えられました。

 クラスメイトは、アジア数カ国から留学をしに来ている人達。講義の話題も自然と各国の社会問題が採り上げられます。従って、私はフィリピンに居ながらにして、日本の現状と他のアジア諸国の現状を比較する作業が多かったのです。幸い、フィリピン人の担当教授はアメリカ留学経験のある方で、先進国の現状も理解されていたため、私自身もフィリピンと日本、途上国と先進国について新しい側面を見いだすことができました。

 国際協力・東南アジア・異文化・人との出会いが好きという入り口から国際協力に入った私にとって、興味の対象となるものは単純に国内ではなく、国外でした。今思うと、海外の人に歩み寄ることも、国内の人に歩み寄ることも同じだと理解していなかったのです。自分は海外で学ぶのだと憧れ、意気込んでいたのは事実です。

 そうして私の勝手な観念で、日本のソーシャル・ワークは、高齢者、障害者、子供が対象であると決め付けていました。今では国際協力も包括的に福祉サービス職の一つであると捉えています。

 ソーシャル・ワークは、人々の生活の質を損なうような、社会にはびこる要因を変えていくことに力を注ぎ、中でもそういった社会問題に最も影響されやすい人々を助けるということであると、講義を通して、フィリピンでの体験を通して、路上生活をしている大人、子供を見る度に、そのソーシャル・ワークの目指すゴールに感動すら覚えました。

 教授には、日々、教授自身が経験したソーシャル・ワークの素晴らしさについて情熱いっぱい語って頂き、私も教授たちと同じフィールドで働きたいとより強く思うようになりました。「どんなに悪い状況でも解決策を見いだし、光を見つけるの!」と、今のフィリピンの悪循環が繰り返される現状にも関わらず、過度なプラス思考とも言えるかもしれない言葉も、あの輝いた目と笑顔で言われると、私がフィリピンの社会問題に悲観的になりすぎているのかと考えさせられることもありました。

 私は勝手に、フィリピンで困っている人と、日本で困っている人、如いては、途上国の人、先進国の人に線引きを行なっていたことに気付きました。

 経済的要因で、各国の人々が抱える問題の深刻さ、量、質は異なります。しかし、フィリピンでストリートチルドレン、麻薬中毒者など社会的弱者の問題を考え取り組もうとしている私が、日本に一時帰国した際に目にする、駅で横たわるホームレスも、日常の精神的苦痛に悩む人も、同じ、ソーシャル・ワーカーを必要とする人達なのに、フィリピンにいる私と日本にいる私とでは、同じ困っている人を目の前にしているのに、何か感じるものが異なっていたのです。

 しかし、今述べたように、どこにいたとしても、国際協力が国内協力になろうとも、それは地理的な違いであって、フィリピンの教授が教えてくれたように、同じことなのです。その単純な事実に気がつくまでに多少時間は掛かりましたが、フィリピン留学から学んだ点は、単に学問ではなく、人としてどう他者と関わるべきか、自分の信念に情熱をもつことなど、1人の人間としての信念だと感じています。

 人々の生活機能をよくすることに焦点を当てる専門職。その中核をなすものは、私がフィリピンで学んだこと。人々や社会を良くするための目標を設定する上で欠かせない哲学や価値観だと思います。人々の人生を良い方向に導くこと、人々のニーズに応えるのは社会の役割だと信じること。フィリピンでの学びは、私自身の人生の糧になったと強く思います。

 大げさに言えば、人々の健康が病んでいる、経済が病んでいるフィリピン、そして社会が病み始めている日本を行き来できたことにより、学ばせてもらったことは、国内・国外と別けて考えることに違和感を与え、どの場所にいようとも私が敬愛大学で学んだ国際協力、フィリピン留学で学んだソーシャル・ワークを活かし、それを必要とする人に歩み寄ることが、私の次の場所だと思います。

 どんなかたちで、今までの私の経験を活かせるかは、どれだけ自分が得てきたものを忘れずに信念、情熱として心に留めていられるかにかかっているのでしょう。

 最後に、私が出会い、関わりを持って学びを与えてくれた方々に感謝の気持ちで満ちています。ありがとうございます。


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