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2017年度 第7回 観光・航空業界(通算89回)(平成29年11月16日)

ツーリズムで働こう!


伊豆 芳人様
   ANA総合研究所客員研究員
   元・ANAセールス常務取締役 

◆ ツーリズムとは?

ツーリズムとは何でしょうか?
 訳せば、観光事業、旅行業、などと訳せますが、私は観光産業の意味で使っています。ですからツーリズムで働こう!とは「観光産業で働こう!」という意味です。これから私がお話をするツーリズム、観光産業とは観光によって日本の収入が増え、雇用も増えて、日本を元気にしていく仕事のお話です。日本は今、少子高齢化・人口減という国家存亡の課題を抱えています。ツーリズムによる交流促進・経済規模の維持、雇用の確保は大命題であって、それを観光立国と呼びます。日本の将来はまさに日本のツーリズムの発展にかかっていると言っても過言はありません。

◆ ツーリズムの経済規模

 観光庁の発表では、2016年、日本国内での旅行消費額は25兆8,000億円にもなります。GDP(537兆2,890億円)の4.8%の規模です。その内14%くらいが訪日旅行者の消費額で3兆7,476億円ですが、この5年で3.5倍にもなっていて、訪日旅行者の消費額・経済効果に注目が集まるのはこの成長率です。また、旅行を貿易で見ると、訪日旅行は日本にお金が入ってくるので「輸出」、海外旅行は日本人が海外でお金を使って出て行くので、「輸入」と見る事ができます。
 2015年で、日本から海外への輸出品のトップは、自動車です。1年間で12兆463億円のお金が日本にもたらされました。次いで化学製品7兆7,594億円ですが、訪日旅行は3兆4,771億円で半導体など電子部品、鉄鋼製品、自動車部品などと並ぶ外貨獲得額になっており、輸送代も梱包する費用もかからない立派な「輸出産業」になっています。まさにアベノミクスの成功例に挙げられているわけです。
 訪日旅行は日本の輸出総額75兆4,270億円の4.6%に当たります。25兆円8,000億円の中には、かばん、保
険、服も、靴も、薬を買う消費額も含まれるので人が動く、人が旅行をするということは、多くの産業が関係していま
す。皆さんがツーリズム、観光産業を航空会社や旅行会社、ホテル業と思っているなら、その認識は改めて欲しいと
思います。例えば、訪日外国人が使ったお金、3兆4,771億円の内の、買い物代は1兆4,260億円にもなっていて、
爆買いが下火になったとは言え、訪日外国人が使ったお金の約38%はショッピング、小売業の売上になっています。

◆ 旅行会社の現状

 2106年の旅行会社の総取扱高は5兆5,500億円、JTBは一人横綱くらいのガリバー企業です。HISで4,000億円規模、楽天トラベルでさえ5,000億円規模です。
 私の出身会社であるANAセールスが約2,000億円です。一方世界のオンラインエージェント、エクスペディア、プライスラインは全世界での総取扱高は約8兆円です。パンフレットで販売するパッケージ商品の時代は終わり、インターネットを使ったワールドワイドのONラインビジネスの時代に完全に変わっていますが、日本の既存の旅行会社はなかなか脱皮できておらず、21世紀の10数年で日本の旅行会社の取扱高は1兆円以上減っています。また外国人旅行(訪日旅行+日本にいる外国人旅行者の旅行)の販売額ですが、約2,000億円しかありません。つまり、日本に来る外国人旅行者は日本の旅行会社を使わない、エクスペディア、プライスラインなどのOTA、自分の国の旅行会社を利用しているわけです。空前のインバウンドブームを日本の旅行会社は取り込めていないわけです。
 楽天、じゃらんなどのオンライントラベルエージェントも、インターネットを駆使した新しい販売手法でシェアを伸ばしていますが世界規模のエクスペディア、プライスラインには遠く及びません。世界はいまや大交流時代と言われるほどの海外旅行者が急増中です。2016年、世界中の海外旅行者数は12億3,500万人で、ここ7年連続で増えています。世界の旅行会社、航空会社などのサプライヤーは国境を越えて、この大交流時代の旅行需要を取ろうとしています。日本の旅行会社も世界の大交流をオンラインエージェントやサプライヤーと競争して取り込んでいく意欲、アイデア、覚悟があれば、日本の観光立国にとっても、大事な産業・機能ですので、必ず復活・再生すると思います。

◆ ツーリズムは双方向の交流促進

 訪日旅行者数は観光立国宣言の年、2003年には521万人だったが、2016年には2,403万人となり、4.6倍にも増えました。しかし、日本人の海外旅行者数は低迷中です。日本人の人口が減り、海外ではテロも多発し、しょうがないのではと思うでしょうが、観光立国の目標は「交流増」です。交流は双方向です。このまま日本人の海外旅行が減り続けて良いのでしょうか?世界は大交流時代です。日本人の海外旅行者数を増やす取組が必要です。経済効果ばかりが注目されますが、海外へ旅して、異なる文化、風俗、自然、歴史に触れることの重要性は言うまでもありません。世界の多様性を知り、国際感覚を向上させる重要性は言葉では言い尽くせません。世界の多様性を知らずして、訪日外国人のおもてなしはできません。ツーリズムは双方向の交流でビジネスをする仕事であり、双方向の交流促進が観光大国への道です。
 「観光」は国の光、つまり文化・文明を見る、見せることです。大学生のうちに世界の光をたくさん見てきて欲しいと思います。

◆ いよいよ旅行会社・地方の出番です

 訪日旅行者消費額3兆7,476億円と増加しているとは言え、ショッピング・買い物代が総額の38%、1兆4,261億円にもなります。極端なことを言えば、日本の観光立国はショッピングで支えられていることになります。 日本の魅力は都会でのショッピングだけですか?日本の地方に魅力はないでしょうか?観光とは光、つまりその国の文明・文化を観せる、という意味ならば、日本の光とは免税店や百貨店で売られている製品だけではありません。政府目標の8兆円(2020年)、15兆円(2030年)を達成するためには、「もの消費」から「こと消費」、つまり日本の文化などを体験することで旅行消費額を増やす努力が必要です。日本中で「こと消費」の仕掛け作り、受け皿作りが求められています。「もの消費」であれば百貨店や免税店の分野ですが「こと消費」であれば、それこそ旅行会社や各地方の自治体などの腕の見せ所です。計算式は単純で、観光客が増える仕掛け×消費単価を上げる仕掛けであり、その答えの最大化を目指す仕事です。大変ですがやりがいのあるツーリズムの仕事だと思います。

◆ ANAセールスの求める人材

 ANAグループとして共通した人材像、どのように行動して欲しいか?という行動指針を”ANA’S WAY”と言います。パイロットもCAも整備の人も営業の人も共通の行動指針で、まずは「安全」、グループの経営の基盤です。そしてお客様視点で行動する、社会に貢献する、チームANAとして行動しよう、グローバルな視野を持って努力しよう、まさに大事なANAグループ人材として基本的な行動指針です。
 それに加えて、ANAセールスは販売会社として旅行会社として、独自の行動指針を作りました。それは、
   ①Go for it !   「迷ったらやってみる社員」
   ②Be yourself ! 「ぶれない姿勢で行動する社員」
   ③Think new !  「今までと違う、ワンダーなことをやる社員」
です。旅行業を取り巻く環境は猛スピードで変化して、今までと同じ事をやっていたら、旅行業に明日はない、という危機感と様々な仕事・業種があるANAグループの中で、遠慮なんてしないで旅行業のプロとして堂々と意見を言え、という思いを込めています。
 また、お客様満足(CS)とはイコール社員満足(ES)で、車の両輪みたいなものです。ESを大事にする企業はお客様の満足度も高く業績も良いと思います。皆さんが行きたい会社にいる先輩にたくさん話を聞いてみてから会社を選んでください。

◆ 傲慢になるな!

私が尊敬する方(元ANAの社長)が社員の過信を恐れ、いつも、おっしゃっていた言葉を最後にご紹介します。
 「謙は衆善の基にして、傲は衆悪の魁なり。」
です。 別に社員は間違ったことをしていない、のですが、ライバルの調子が悪く、自分たちの調子が良い時、心に傲慢さが出る恐れがあり、その傲慢さに最初に気づくのは、ANAを愛していてくれるお客様、つまりロイヤルカスタマーです。傲慢な態度とは、偉そうにふんぞり返る態度や偉そうな言い方をするのではなく、うぬぼれと過信です。

   謙虚さはあらゆる善の基礎であり、傲慢はもろもろの悪の始まりである

以 上