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2013年度 第13回 旅行業界(通算41回)

遠藤 昭夫 様

元近畿日本ツーリスト株式会社 常務取締役

旅行業の現状と課題 ~安心・安全のためのリスクマネジメント~

旅行業とは

 世界初の旅行業は、1841年に570名の参加者を集めた禁酒大会を取扱った英国のトーマスクックと言われております。一方、我が国初の旅行業は、1905年(明治38年)に国鉄の貸切臨時列車を使い約900名の参加者を集めた「善光寺参詣団」を取扱った滋賀県草津駅前の食堂業、南 進助氏がとされています。その後、1912年(明治45年)に鉄道院が設立され、JTBの前身となります「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」が設立され、国策による外客誘客のインバウンドからスタートいたしました。1970年代になりますと国内・海外パッケージ旅行が主流となり旅行の形態が団体旅行から個人旅行への移行時期となりました。1980年代はJR系旅行会社、HISなどの格安チケット販売会社や楽天などの新しいプレイヤーが登場してまいります。1990年代は、湾岸戦争に始まりバブルが崩壊し失われた10年とも言われ、2000年代に入りますと、楽天や一休などに代表されるOTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)の進出も多くなってきました。
 インターネットの普及で旅行業にも変化がでてきました。自宅にいながら予約できるWebサイトからの予約が増加してきたこと。国際航空券はEチケットにより発券が不要になったこと。楽天、一休などのほかにもOTAの参入も多くなってきたこと。従来型のリアル店舗を持たなくなり、24時間対応も可能となったため、ウエディングやクルーズなどの専門店や高額商品を取扱うコンサルテーション型店舗へ特化するようになってきたことなどであります。また、JR券、航空券、宿泊券は、JR、航空会社、ホテル・旅館が旅行会社を介さずWeb上で直接販売できることから、一部、旅行会社離れも起きております。
 旅行商品のセグメントは主に「国内旅行」、「海外旅行」および「国際旅行」に区分しております。売上高の構成比は、国内が6割で海外が4割であります。
 国内旅行の内訳は、「団体旅行」、「企画旅行」および「個人旅行」に区分されます。団体旅行は招待旅行や修学旅行などで主に企業や学校法人といった組織団体に販売いたします。なお、現在の団体旅行は旅行だけが目的のものは少なく、学会、全社会議、スポーツイベントなどのイベントに移動手段をプラスした旅行が多くなっております。企画旅行はパッケージツアーのことで、店頭で販売されておりますがWebサイトでの受付が非常に多くなってきております。個人旅行は団体旅行およびパッケージツアー以外で、JR券・航空券・宿泊券の個札単品の販売などでJR他各社からの委託販売が主になります。
 海外旅行のセグメントは国内旅行とほぼ同様であり、「国際旅行」は訪日旅行など海外からのインバウンドやヨーロッパからアメリカのように第三国間の旅行であります。

旅行業の仕事とは

 実際どのような仕事をしているのか担当別に営業まわりの部署に限定し紹介いたします。
 仕入部門は、JR・航空会社・宿泊機関と期間別に座席数や部屋数を事前に仕入れるところであります。この部署は、より安価で仕入ることは勿論ですが、宿泊で言えば大安日や休前日などの「良い日」をどれだけ多く仕入れるかが求められます。
 外販は外回りのセールス担当で企業、学校法人、組織・団体などへ伺い旅行を受注する団体旅行営業の最前線であります。朝から新聞読み合わせなどの情報収集、日中は外回りのセールス、夕方事務所に戻ってから企画書の作成など、毎日朝早くから夜遅くまで頑張っております。パッケージツアーの商品企画は、方面別に企画担当者がおり行程全般の企画、パンフレット制作、販売価格の決定までパッケージツアーのすべてに関わっており熟練工のような仕事をしております。
 店頭販売担当は、お客様が来店される店舗でパッケージツアーとJR・航空・宿泊券などの個札単品を販売しています。お客さまへの商品説明、ツアーの受付・予約および個札単品の予約・発券業務が主な業務となり、個人旅行販売の最前線となっております。添乗員は受注したセールス担当が基本的に兼ねます。次回の旅行受注のセールスを行うチャンスでもありますが、オーガナイザーの要望でもあります。パッケージツアーの添乗の場合は、主に人材派遣会社に委託する場合が多いですが、全ての添乗員に求められることは安全で正確な催行が第一であります。

財務内容について

 旅行業の財務内容でありますが、収益性は他業種に比べて低くなっております。その理由は売上原価および販売費・一般管理費が他業種よりも多くなっていると考えられます。
 売上原価では、JR券などの直接原価が一般に市場で流通しており、価格が消費者に開示されているため販売価格を高く設定できません。また、国際航空券は従来手数料を収受できましたが、現在では収受できません。加えて旅行中のお客さまの事故などの損害に対し多額の保険料を負担しなければなりません。
 次に費用面でありますが、人件費においては、他業種に比べ人件費率が高くなっております。コンピュータ化が進む中でも、セールス担当や予約・発券担当などまだまだ「人」がやることが多いからであります。また、全国の約百数十店舗に設置している端末機での予約・発券および電子カルテ・行程管理などハード・ソフト両面でのインフラ整備に多額の投資をしております。その維持経費および減価償却費に多額のコスト負担がかかっております。以上の理由で他業種に比べ収益性が低くなっていると考えられます。

安心・安全のためのリスクマネジメントについて

 最後に本日の副題であります「安心・安全のためのリスクマネジメント」につきまして、「事故、自然災害、紛争」および「消費者保護」の観点からお話しいたします。
 事故、自然災害、紛争などへの対応として、いくつかの保険に加入しております。
一つ目は「特別補償保険」であります。特別補償保険は、旅行会社主催の企画旅行に参加される旅行者の事故や損害(病気は別)に備えることを目的としております。二つ目の「旅行業者賠償責任保険」は、旅行会社自身のミスにより発生した旅行者の損害に備えることを目的としております。保険加入の他に現地バス会社などのサービス提供機関の選定につきましては、信用・信頼度に加え支払能力があるか否かを判断するため財務内容などについても参考にいたします。あってはいけないことですが、現地バス会社が事故を起こした場合、治療費等の損害金の請求に耐えられるか否かが、サービス提供機関選定の条件にしているからであります。その他に外務省およびリスク管理会社から情報を収集し発信しております。外務省からの直近の渡航自粛情報に加え海外のリスク管理会社からの情報を重ね合わせ、正確・迅速に旅行者に案内するとともに、通達の内容によっては、渡航自粛先への旅行催行中止や延期などにより旅行者の安全を確保しております。
 消費者保護の対応としては様々な制度や法律があります。「営業保証金制度」は、旅行業法に基づき旅行業の認可を受けた会社すべてが適用される法定制度で、旅行会社の営業停止などによりツアーに参加できなかったなど、被害を受けたお客さまに対し損害額の弁済を目的としております。「弁済業務保証制度」は、営業保証金制度と同じ目的ですが、日本旅行業協会に加入している会社は営業保証金制度に代えてこの制度が適用されております。「ボンド保証制度」は、弁済業務保証制度の上乗せ制度で任意加入となっており、当社も加入しております。手厚くカバーするよう努めております。「資金決済に関する法律」は、旅行会社が発行する旅行券や百貨店などが発行する商品券などに適用される法律であります。旅行会社が廃業・倒産した場合、旅行会社が発行した旅行券などのプリペイドカードの弁済に備えることを目的としております。形のない商品を販売しており転売などできませんので、以上のような制度・法律で消費者保護に努めております。

 以上ですが、旅行商品は内容において各社ともそんなに優劣がつくものではないと思っております。旅行は日常生活から離れ、視覚・味覚などの五感を駆使し、楽しい時間を記憶しに行くことではないかと思います。したがって、何事もなく自宅に戻ってくるのが当たり前で、旅行中に何か問題が起こってはいけません。そのため旅行会社はお客さまに「安心・安全」の提供を基本とし「旅」を販売しております。様々なリスクに備え対策を講じ信頼される旅行会社でありたいと思っており、それをできる旅行会社の商品がお客さまに選ばれるべきだと信じております。